【イベント感想】劇場版ビバ!怪獣:ザ・ライブ(2019.09.28)

特撮
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激走戦隊カーレンジャーのチーフプロデューサー高寺成紀さんのトークイベント(以下ビバライ)に行ってまいりました。

オフレコな話題が飛び交うイベントなので、感想中心ですし、発言内容を私が誤解したり聞き間違えたりしている可能性もあります。
これらの事を承知の上でお読みください。

「ビバ!怪獣:ザ・ライブ」とは?

「ビバライ」こと「ビバ!怪獣:ザ・ライブ」は、調布FMでオンエア中の「高寺成紀の怪獣ラジオ」のスピンオフ企画で、2015年から特撮ファン向けに開催されてきた「おもしろ質疑応答ライブ」です。語り手は、『激走戦隊カーレンジャー』『仮面ライダークウガ』などのヒーロー番組を手掛けてきた元東映の高寺成紀プロデューサー(角川大映スタジオ勤務)です。

劇場版ビバ!怪獣:ザ・ライブのチラシより

そもそもは高寺Pが特撮ファンとの交流がしたくなって無料で始めたイベントであったものの、回を重ねるうちに自らの経験や特撮作品の実情を語ることで次代に繋げる役割に気づき始めた、との言葉が非常に印象的でした。

キャリア教育のお手伝いでしばしば高校生と触れ合う機会の多い私の実感ですが、社会生活や職業のリアルに触れる機会が少ないために自分の将来が想像できない生徒は非常に多いです。

質疑応答に絡めて、ものづくりの楽しさややりがいばかりでなく仕事の失敗や挫折もさらけ出す高寺Pのトークは、特撮ファンだけでなく進路に悩む生徒や学生にも得るところが多いでしょう。

私も生徒に挫折の経験を語ろうとしたら学校からストップを入れられたことがあったので、教育機関では社会の実情を見せることは難しいのかな、と考えることがあります。

率直に言って高寺Pファンの集いの要素が強く、作品を見ていないと何が何だかわからない質問も多いビバライですが、映像業界の作り手からの濃厚な発信がオープンに行われている貴重なイベントでもありますので、志望者には特にオススメしたいです。

映像制作に興味なくても、高寺Pの熱いしゃべりに引き込まれ、いつの間にか胸がワクワクと楽しくなるのがビバライの魅力だと思います!

「劇場版」になって変わったことは?

有料化して開催場所をシアタス調布という映画館に移し、グレードアップしたビバライ。

映画館という場所を活かし、ワンドリンク付きの上スクリーンや音響機器を活用したり椅子がいいので4時間快適でした。

ハード面だけでなく、今回は脚本家の荒川稔久さんをゲストに迎え、非売品のお土産あり、ゆるキャラ「ガチョラ」のグリーティングあり、角川大映スタジオから物販あり、ソフト面も大充実。

シネコン怪獣ガチョラ

よく動きよく喋るガチョラ

これはサービス良すぎじゃない……?

思わず心配になるレベルですが、高寺P曰く「企業とのコラボによる強化フォーム」でマネタイズを測っているらしいので多分大丈夫なんでしょう。

(高寺Pが自腹で母上を招いた甲斐もあり)ちゃんと満席でしたし!

あと、関係者席に東放学園の学生さんたちを招いていたことからも、次代への架け橋を意識してのイベントなのが伺えます。

荒川稔久✕高寺成紀

第一部は写真を見ながらの荒川稔久ヒストリーでした。

「好きならプロになっちゃえば?という話です」とおっしゃっていた通り、好きが高じてプロになった荒川さんの傍らには常に特撮がありました。

帰ってきたウルトラマンや怪獣のシールが敷き詰めるように貼り付けられたランドセルの内側。

帰ってきたウルトラマンの話題しか書いていない作文「冬休みの思い出」。

高校の文化祭で披露したミニチュア特撮映画。

大学生のときに作った『付録研究』同人誌。

付録研究のため『小学3年生』編集部に連絡したことから『てれびくん』編集長と知り合い、結果的に業界への足がかりになったというシンデレラ(?)ストーリーなんですが、同人誌自体のテーマが趣あるだけでなく、オリジナル付録も添付されていてこれが付録というより大人向けのペーパークラフトのようで、たしかに業界がほっておくわけないよなと納得の出来なんですよ。

例えるなら外見からは感じさせないが実は戦闘力が馬鹿強すぎるので気をそらした隙に逃げ出してかろうじて生き残れるかどうかという相手が荒川稔久なのでしょう。冨樫義博のマンガに出てきそう。

上記の同人誌は『魔法のプリンセスミンキーモモ』や『宇宙刑事シャイダー』のイラストが描かれていて、なんとこれも荒川画伯によるものらしい。上手い。
(下記ツイートの4枚めの画像)

大学生のときには『とんがり帽子のメモル』のキャラで同人アニメを作りたくて絵コンテまで描いていた。

出て来る資料一つ一つが「よく保存していたな!」とも思うし「こだわりが細かい!」とも思うし「面白い!」とも思う。ともあれ、好きなものを一貫してアウトプットし続けている『業』がそのまま『職業』へ繋がっているのがよく分かる資料でした。

荒川さんの成果物に対して高寺Pの添削が入り、「指摘事項で黒々としたFAXが延々と流れてくるので娘が怯えた」エピソードに真剣なものづくりの現場を覗き見たようで震えました笑。

荒川ヒストリーにつづいて、『仮面ライダークウガ』現場でのオフショットを見ながらのトークは、最終回のキューバロケの話題を中心に盛り上がりました。

今回のビバライでは集まった質問の8割は『仮面ライダークウガ』に関することだったそうで、表に出せないクウガの話題が多かったのですが、制作者や関わりある人たちの聴けば聴くほど、「熱意」や「時代」や「偶然」のような再現性の薄いものに支えられて生まれた作品なのだと思いました。

自分で話しながら当時を振り返って「ゲロ吐きそう」と漏らした高寺Pの一言にすべてが詰まっていますよね……。

楽しい思い出の付け合せに苦い事実を突きつけていく高寺Pのスタイルを見ながら、「好き」だけではプロは続けられないけれど「好き」が無ければ動けない部分もあるんだろうなという思いが深くなりました。

質疑応答

本質に迫る質疑応答内容が多くて、なんかびっくりしちゃったな。レベル高いオタク多いなって思った笑。

具体的な質問とその回答は差し障りがありそうなので避けますが、回答だけでなく高寺Pと荒川さんそれぞれの「子ども番組観」「制作ポリシー」が見えたところが面白かったです。

例えば大人が見ると変化球なストーリーで面白いと評価が高くても、主人公と一体化して見ている子どもたちに対してショックを与えるような話はできない、っていう制限が時代とともに厳しくなっている現状について、興味深く聴けましたね。

他にも、大人(≒オタク)からみて物足りなさや描写不足を感じる場面もあるのですが、物語のバランスからそのように描かざるを得ないこともあるという話題と、制作工程のうち最も大事なのは脚本の直しで、これが甘いものがつまらない作品と呼ばれるのだという話題がものすごく心に残りました。

子ども番組だからこそオタクに不評でも子どもファーストの方針が正解って言葉は、挑戦や挫折を繰り返した上での結論なのでは無いでしょうか。勘ぐりかな笑。

まとめ

オタクが好きなものについて熱く語ってるのを見るのが好きなのですが、オタクによるオタク向けイベントの雰囲気があるビバライはめちゃくちゃ楽しかったです。でも特オタだけ喜ばせておくのはもったいないです。

実情を知ることで関心が高まるというのはあることなので、特撮ファン層の拡大や業界人材の広がりへの可能性を秘めたイベントなのでは……とそんなことは高寺Pは考えてないのでしょうが勝手に期待してしまいます。

いやー次回も楽しみだなー!

 

おまけ。回答を得たので差し障りない程度に追記しました。

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