生徒の前で、どんな話をしたらいいの?「社会人先生」を依頼されたら意識したいこと





私はキャリア教育コーディネーターとして社会人を学校に招いてお話をしていただくことはあっても、自分の話をすることは無かったりします。

ですが、コーディネーターも「社会人先生」役をしておいたほうが依頼をするときに同じ立場に立った経験談を話せます。
私も自分の経験を高校生にプレゼンする機会に恵まれましたので、ポイントを書き留めておきたいと思います。

職業観のうすい生徒にも共感を呼ぶ3つのポイント

私が中学生の頃、卒業生の方が学校にいらっしゃってお話をしてくださった覚えがあります。残念なことにほとんど内容を覚えていないので、当時の私にはピンとこない話だったのかも。
今でも、そういった職業講話の授業をしている学校は多いと思いますが、多くの方が「職業の解説」を長々としてしまうようです。

その職業に興味がある子は聞き入るかもしれませんが、大半の子は興味が無いと思ってよいです。「この職業に興味を持って欲しい、楽しさを伝えたい」という心意気でゲストになったとしても、よほど話が上手ければ別ですが、残念ながら多くの場合生徒の心まで届きません。

なぜ、そういったことが起きるのでしょうか?

生徒はまだ社会に出たことが無いため、職業の話を聞いてもピンと来ません。「こういう仕事があるのか」と思っても、そこで終わってしまいすぐに忘れてしまいます。これでは社会人が時間を割いて学校に来た意味がなく、準備してきた社会人にとっても張り合いがありません。

そこで、生徒の共感を呼ぶ仕掛けが必要です。

【仕掛けその1 自己紹介で心をつかもう】

職業の話をする前に、自己紹介をいれると思いますが、相手が高校生なら、自分が高校生のときの話を話しましょう。そんなことか、と思われたかもしれませんが、じつはこれには工夫が必要です。

「私が高校生の頃、世間はバブルで……」なんて、時代背景を語ってはいませんか?
やってしまいがちなこの導入、じつは生徒に心の壁をつくってしまうフレーズなのです。
「バブルの頃なんか知らないよ。自分には関係ない話だな」と、そこから話を聞いてくれなくなります。

それよりも「私は毎日部活のためだけに学校に来ていました。朝練・昼練・放課後と部活づけ。大会出場目指してチームが一丸になりました!」などの実体験を話して欲しいと思います。

ちょっと恥ずかしい失敗談が入っていると更にGOOD!
例えば、部活で頑張った話のあとに「おかげで勉強時間はゼロ、試験前だけ成績の良い子に頼って赤点だけは回避してました」なんて。

学校を卒業してから年数が経つうちに、学生時代のことは忘れたり美化されていきます。大人になると無意識のうちに「子どもの前で恥ずかしい姿は見せられない」と思ってしまい、失敗談を話すことに心理的抵抗が生まれるものです。

ですが、失敗談こそ「今は立派な大人でも、同じ年頃のときは自分と似たようなことをしていたんだな」という生徒の共感を呼んで、話を聞いてくれる態勢になるのです。
ここはぜひ勇気を出して、学生時代に悩んでいたことや思い出すと胸が少し痛むようなことを話に盛り込んでくださいね。

【仕掛けその2 この職業がなかったら?】

あるテレビ番組で薬剤師さんが「薬剤師は処方箋に書いてある薬を出すだけの仕事じゃないんです。皆さんの命を守る大切な仕事なんです」とおっしゃっていました。

おそらく、この薬剤師さんは今まで何度となく仕事内容を誤解されてこられたのだろうと思います。自分の仕事を理解されないって本当に悔しいですよね。

でも、私たちは薬剤師という仕事についてあまり多くを知りません。薬剤師さんがどうやって『私たちの命を守っているのか』、考えたことがないと思います。

そこで、社会人先生が自分の職業についてどうやって話すかを考えるとき、『この職業がなかったらどうなってしまうのか?』という視点を入れてみてください。

薬剤師さんなら、「お医者さんは病気の診断はできるけど、知っている薬の種類はせいぜい◯◯種くらい。それに対して薬剤師は薬に関するプロフェッショナル!もし薬剤師がいなかったら、お医者さんが間違った薬を出しても誰も気づかない。相性の悪い薬を飲んでしまったら患者さんの命にも関わる。薬剤師だからこそ、処方箋を見るだけで患者さんの状態も分かるので、患者さんに対して適切な対応もできる」

そんなふうに話してもらえれば、薬剤師に興味が無い子も関心が高まりますよね。
また、『この職業がなかったらどうなってしまうのか?』という視点は、世間に知られていない職業や事務職などの地味な職業であるほど、相手に伝わりやすい切り口です。

職業が成り立つには必ず理由があるのですから、ここはじっくりと考えてみましょう。

【仕掛けその3 専門用語は言い換え・具体例・図版を使ってわかりやすく】

仕事をしているとビジネス用語・専門用語・省略語に慣れてしまい、ついつい使ってしまいがちです。
「学生にもこれくらい分かるだろう」と思わず、話の組み立てができたら、その職業に関係ない人や若い社員相手に一度話を聞いてもらって、分かりにくいところや詳しく聞きたいところを挙げてもらいましょう。

意外と「こんな言葉に引っかかるのか」という発見がありますよ。
例えば、「この案件は入札で勝ちましたが、納品までタイトな工程で、月の半分はタクシー帰りになってしまいました」という文章。

生徒からすると話の内容も、この話をした社会人先生の気持ちもほとんど通じません。そこで、こんなふうに言い換えてみてはいかがでしょうか。

「このお仕事は同様の商品を作っている会社のなかから、私たちの会社が選ばれました。とても名誉なことです。でも、今のペースで作っていてはお客さんが指定した期限まで間に合いません。もし間に合わなければ会社の信用をなくし、お客さんは今後私たちの商品を買ってくれません。私たちは夜遅くまで作っていたので、終電に間に合わなくてタクシーで帰ることもしばしばでした」

言い換えてみると文章は長くなりますが、そのぶん仕事への考え方がわかります。
また、作っている商品や仕事に使う道具などの実物や写真があれば、生徒に見せたり触らせたりすることで話にリアリティを感じてもらえます。

【仕掛けその4 クイズ形式で能動的な話に!】

そうは言っても職業に就いたことのない生徒からすると、社会人先生の話はどこか遠くて入り込みづらさがあります。そんなお話を聞いているだけでは、どうしても飽きてしまいます。
そこで、時折クイズ形式にして生徒にも考える時間を設けるのも、最後まで話を聞いてもらうための工夫です。

たった1枚の処方箋から、薬剤師さんはいくつの情報を読み取っているのか。
小さなネジ一本が、どれだけの工夫がされているのか。
新人とベテラン、どんな違いがあるのか。
仕事をしていて難しい問題が出てきてしまった。学校で言えばこういうことだけど、あなたならどうする?

そんな問いかけをするだけで、生徒の目が輝いてきますよ。

まとめ

社会人が生徒に職業の話をするとき、仕事への思いが強いゆえに自分の話はそこそこにしてしまう傾向があるようです。ですが、「この職業を選んだ理由」「この職業に就いて初めてわかったこと」「仕事のつまずきとそれを乗り越えた経験」など、個人的な体験を連ねたほうが生徒たちが聞き入ってくれることがわかってきました。

それは、職業への思いはわからなくとも、体験したときの感情や判断したときの価値観なら生徒にも理解できるということなのでしょう。
また、こういった話を聞くことで、ある日急に大人になるのではなく様々な経験が人を成長させるのだということが伝わります。

もしあなたが社会人先生を依頼されたら、ぜひ一度はチャレンジしてみてください。
難しそうだとかうまく話ができるか不安かもしれませんが、自分の人生や職業観を振り返ることで仕事へのモチベーションがアップしたり、将来社会に出ていく生徒たちを応援する気持ちが高まります。

なにより、生徒たちの若い感性と触れ合うことは素晴らしい刺激になりますよ!


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