【レポート】みつける突き抜ける人材@オープンカレッジin水戸(2017.02.18)




『オープンカレッジ in 水戸』1時限目は『みつける 突き抜ける人材』を選択。

少子高齢化・人口減少社会・深刻な人手不足・AI化・富の2極化などなど、これまで積み上げてきたものが全く通用しなくなる時代を日本は迎えつつあります。
政府も働き方改革を打ち出し、新しい価値観や多様性を身につけるよう促しているように感じられます。

このセッションでは、すでに「突き抜けた」生き方をしている方を講師・ゲストに迎えています。
「我が道を行く」生き方について、まだまだ批判や排除の方向に動きがちな日本社会ですが、そのような方を活かす方法などを聴いてみたいと思い受講しました。

撮影・録音・録画は禁止のため、自分用のメモ書きを元に再構成していますので、実際の発言とは異なっている部分や抜けなどがある点はご容赦ください。

登壇者:波頭亮(経済評論家)、磯田道史(歴史学者)、三枝成彰(作曲家)、塙佳憲(ゲスト・現代の飛脚)敬称略。

自己紹介と「突き抜けた人」について

・テーマについては経済を専門にしている自分が提案した。日本も貧富の格差が拡大している。アメリカでは上位3%の人だけで国全体の半分の富を持っている。このような社会では、皆と同じことをしているだけでは他の人に取って代わられる。今後10〜20年でドラスティックな変化が訪れるだろう(波頭)。
・磯田さん、三枝さんは知り合いのなかでもっとも「突き抜けた人」。お二人に半生を語っていただき、突き抜けるなかでどんな苦労があったのか、を聴いてみたい。
塙さんはまだ大学生だが、現代の飛脚と称し、褌で街を走るようなことをしている。
突き抜けた人=優秀なだけではない。常識ではとらわれない強さも兼ね備えている(波頭)。

 

・「突き抜けている」自覚はない。歴史学者なのに現代や将来について語ってばかりいる、と批判をもらうことも多い。「逸脱している、イッちゃっている」ということかもしれない(磯田)。
・(会場の)茨城大学に8年勤めていたが、学生たちには「これからの世の中では『余人をもって替え難し』というところをお持ちください」と言ってきた(磯田)。
・自分が「求められた人生」とは、公立大学の教育学部を出て公務員や大きな企業に勤めることだったが、いまやそんなレールは寸断されている。「国立大学に行けばなんとかなる」時代は過ぎ去った(磯田)。
・母親によれば自分は困った子・席についていない子だったという。自分はとにかくものすごく好奇心の強い子で、自作の測量器で太陽の高さを測ることに夢中になったり、授業に出なくて図書館で発見されたりした。「頼まれもしないことを自分で始める」「気になったことは自分で全部調べないと気がすまない」(磯田)。

・(磯田が)茨城大学のあとに浜松に行かれたのも、周辺の古文書を調べることが、どのように地震がきてどんなふうに住民が逃げたのかを、地震学者とは違う観点から防災に供せると考えたためだった。今、世の中のエライさんは組織の利害や権力とどう寄り添うかばかり考えていることで偉くなっているが、磯田さんは全くそれがない。興味と正義で進み育んでいるから、こんなに素晴らしい仕事を次々となされていると思う(波頭)。

・小学校時代は学校新聞の編集長に立候補して落選したのに腹を立てて、民間の新聞を立ち上げて売っていた。「選ばれないなら自分でやってやろう」と思っていた。このエンジン01も15年やっているが、始めた頃はお金の面で苦労した(三枝)。
・考えてみるとぼくの人生は自分一人でやってきた。オペラを書くことは趣味で仕事とは思っていません。仕事は儲かる、オペラは儲からない。20年で60億を使った。お金を出してくれるスポンサーがいたからできた。作曲家が自分でお金を集めて自分でやる、っていうのは世界中さがしてもいない(三枝)。
・突き抜けてるとは思いませんが、やりたいからやっている。今、死んでも悔いはない。幸せに感じる(三枝)。

・三枝さんは芸大(東京藝術大学)の頃から芸大を代表する作品を残した人に与えられる安宅賞を受賞し、将来を約束された作曲家だと学生の頃から言われてきた。世界のクラッシックをリードする候補生だった(波頭)。
・三枝さんが20代の頃は無調の曲が中心で、メロディや和音など聴いて心地よくなる音楽はクソだと言われる時代だった。三枝さんは「音楽は人の心を打つべきものだよな」と心のなかで思って、スターの座を捨てて、調性の曲をつくるようになったとたんに世の中から黙殺されて貧しくなっていった(波頭)。
・「人は必ず調性の曲を求めるようになる」と思い続け、CMやドラマの曲を書いて食いつなぎながら、グランドオペラを書かれてデビューした(波頭)。

・最近、風が変わってきて僕のほうにむいてきたみたいですよ。先端を行っていたはずの僕が、周りが真似を始めてちょっといい気持ちはしませんね(笑)自分一人でやりたかったのに。でも、50年かかりましたね(三枝)。
・アカデミズムが変わったんだろう、と思います。分からないものを分かろうという努力が今の人たちには無い。悲しいことかな。難しいものに挑戦する気持ちを日本人は失ったんだと思います。分かりやすさを追求しすぎた結果が今の堕落だと思います(三枝)。

・(塙に)このお二人と比べられたらたまらんと思ってるかもしれないけど。
・1年前、この教室でセンター試験を受けてもうすぐ大学2年生です。現代の飛脚ということでテレビにもちょこちょこ取り上げられました(塙)。
・腹掛と褌で新宿や六本木を走っています。社会的要請もないのに「褌をもっと広めたい」と思って。「現代に飛脚がいたら面白いな」と軽いノリで始めた。始めた当初はクラスのLINEから一人抜かされたりして。今は理解されたのか戻してもらいました(塙)。
・高校生と接する機会もありますが、「新しいアイデア」に意味は無いと思っています。「高校生独自の視点」にこだわるとありきたりになっちゃう。それより思いついたことを即実行してみることのほうが大事じゃないかな(塙)。

世間からみて普通じゃない生き方を選ぶ上での苦労や得たもの

・本を書いたおかげでたくさんのすごい人に出会う機会が増えた。山中伸弥のノーベル賞はすごい。人類の寿命自体に影響を与える。囲碁・将棋でトップを取る人に、この人はなぜ突き抜けたことができるんだろうと考えると、彼らだけが見える世界があると気づいた。お金が儲かるとか異性にもてるとかそういうことより先に、なにかに熱中しているときにものすごいエクスタシーを感じている(磯田)。
・将棋の谷川さんは正直で立派な人だと思いました。「(将棋の)羽生さんと僕の間には大きな壁がある。(囲碁の)井山さんと羽生さんの間には無い。わたしが見えてない世界がこの二人には見えていて、それが楽しそうで羨ましい」って言っていました(磯田)。
・人間が本当に熱中している時、なにか鋭い発見の喜びにまさるものは無い。上り詰める人を見ていると、これが分かった、これが成し遂げられた、これが自分のやりたいことだ、ということを追い求めて生きているように見える(磯田)。
・西郷隆盛はそうで、頼まれもしないのに自分の脳中に思い描いた世界像で日本の国家構造を変えてしまった。彼が小さいころ、他の子は虫を取るのに網を使ったが西郷は巨大な臼をかぶせて取ろうとする。当然取れない。何度やってもダメで悔しくて泣いているのを見て、「この子おかしいかも?」と母親は思った。だけど、自分には彼の気持ちがわかる気がする(磯田)。
・自分は武士だから筋力もあり、臼をかぶせても取れると頭のなかで思った。その理想を実現することをひたすら追い求めている。単にセミが取れるのではなく臼でセミが取れる。それを達成して初めて嬉しい世界観を持っている。これが突き抜ける人間の尋常では無いところで、こういう人間が歴史を変える瞬間を何度も資料のなかで見てきているので、そこが重要なのだと思う。なんとも説明できないんですけど。西郷は悲惨な死を迎えますが、ぼくは彼をかわいそうだとは思わない。やりたいことをやったんだと思う(磯田)。

・妻には悪いが武士の家計簿を見つけた時の喜びは、女の子とデートしたとは比べ物にならないくらいのエクスタシーでした。「ひょっとしたらお侍の家計の内容がわかるようなものがみつかるんじゃないか」と思っていたのが本当に見つかった、頭のなかでこうだったらいいのにな、と思ったことが。これって重要なことじゃないかと思います(磯田)。
・当時の歴史学会で良識とされる人が「いやー磯田くん良い資料見つけたね。これで論文を10本くらい書いたら大学に就職できるよ」っていうんです。勤めるために古文書を探したことはなかったので驚きました。出来のいい人はそういうふうに考えるんだと思いました(磯田)。

・中国で三昧境に入るっていいますけど、やってる事自体本人が忘れる状態。いい言葉ですね。そういう状態になれる人が『余人をもって替え難し』になっている可能性が高い。お仕事をやる場合もそうです(磯田)。

・やりたいことをやり続ければなんでもできるだろう、と思っている。人間に才能や頭の良さはあまり関係ない。大きな殻を破るのはやり続ければできると思う(三枝)。
・君の褌も面白いと思う。褌はゲイの文化。太鼓が流行るのは褌だから。外国人のゲイに言わせれば、たまらないっていう。太鼓の音色じゃない。そういうところを読み解けないのは普通の人(三枝)。
・戦国時代は屈強の象徴で、丈が短いほど足軽でも屈強だとされてきたけど、戦国期は確かに同性愛の文化をもっているから、近世のはじめにああいう格好をさせた武士集団はゲイの文化と無関係とは言えないかも(磯田)。
・相撲はゲイだと思わないけど、太鼓はゲイ文化だよ。世界ではゲイ文化が主流。それを否定しては文化は始まらない。ぼくはゲイじゃないけど尊い文化。ゲイにならなかったから自分は二流だと思っている(三枝)。

・塙さんは褌をアピールしたくて始めたのに、なぜ24時間褌じゃないの?(波頭)
・履いているんですけど、今日みたいに寒い日は辛いので。東京にふんどし部という会社があって、そこの人はスーツのジャケットに褌だけの格好をしている(塙)
・なぜ煽るかというと、三枝さんは軽く「やり続ければなんとかなるよ」とおっしゃったけど、やり続けること自体が本当に大変なことだから。経済的にも人間的にも社会的にも。そういうことがないと、底辺になってしまう。「この人じゃなきゃ」という強みとか特技とかをもっていないと全部AIやロボットに替えられてしまう(波頭)。
・いやーぼくは普通の人。(磯田は)この人は変わってるよ。エンジン01の人で変わってるのはこの人と古市(憲寿)くんじゃない?(三枝)

これからの日本について

・才能がなくてもいい、は半分あっている。才能があって賢い奴は駿馬と呼んでいて、走っていってどこかで転んで足を折って前へ進めなくなる人が多い。思い込んでいる鈍牛のほうが強いのは史実からみて感じていること。駿馬の人はだめになると他に道があるんじゃないかと探し始める。自分の脳の中にあるもので環境に合わせていくっていうものがない。自分を世の中に順応させていけば、事がうまく行くと信じている。これは経済成長をもたらさない(磯田)。
・日本が格差が広がるとともに成長率が上がらないのは、これまでやってないことをやるための環境ができていない気がする。努力しろって言うけど、スーパーでいえばレジ打ちを早くする、掃除をもっとするようなことばかりしているけど、それではお客さんの数が変わらなければ同じ売上。お客さんから褒められたお惣菜を極めるというようなことはしていないし、経営者がやれっていうまでやってはいけないことだと思い込んではいないか(磯田)。
・言われるまでやらない幕末の日本がいかに危機に瀕していたかを、史実を見て知っている(磯田)。
・兼業を許さない社会文化とか。自宅で副業をすればGDPも上がるしいいと思うんだけど、兼業をしているから昇進させない、とかおかしいと思う。武士の時代はひたすら単一の忠誠心をもとめるように作ってあるので、ちょっと組織と違うことをすると不利になるようにできている。そういうことを少しづつ変えていかないと、韓国や台湾にGDPが抜かれていき、貧しい国になるでしょう(磯田)。
・(突き抜けている人は)才能は知らないけど、情報や好奇心は桁違いに持っている人が多い。その情報やらに触れた瞬間に直感的に行動する。視野が広い。将棋指しや碁差しは人が考えないような手まで読む。視座の広さは共通点。一見無駄に思えるようなことも子どもたちに許すことは、教育上重要な点だと思う。絶対無駄じゃない(磯田)。

・スーパーマーケットの話をきいて思いましたが、遊びの部分がないと難しい。売上が落ち目になってくると食い止めるのに必死になってくる。上向き・横ばいの時に次の手を打ったり新しいことを始めないとできない。高校・大学の「食わなくてもいい時」に無駄なことをさせるっていうのは大事だと思う(塙)。
・日本だけがダメっていう話になったので、どれくらいダメかっていう話をすると、アメリカ・フランス・イギリス・ドイツ・スウェーデン・ノルウェー・デンマーク・韓国、この国々は今世紀に入って一人当たり所得はざっくり1.5倍に上がってるのに、日本だけGDPは下がっている。世界で下がった国はアフリカの戦乱が起きている国ぐらい。それほど日本はダメ(波頭)。
・日本の制度や慣習がなにか間違っている。それを突き止めるのが僕らの仕事だと思っているが、まだちゃんとできずに申し訳ない。処方箋を書かなきゃダメだとおもう(磯田)。

・日本だけが大きな変革をしていない。一度、2009年に民主党が政権をとったのはチャンスだった。あのときにとろうとしたやり方で、北欧は政権をとって、フランス・イギリス・ドイツ・アメリカよりも北欧の国は一人あたりGDPが高くなっている。税金をどんと増やして、働かなくても失業しても病院も学校も全部タダにして、不安をなくしてやりたい仕事についたり勉強したりできるようになった。知的集積が高付加価値になるほどに、安心と集積を国がどう作るかを考えないといけない(波頭)。
・新聞では失業率が減ったとか言っているが、今の政権がついた2012年と比べても、所得は減っている(波頭)。
・3〜4%減っている。給料が上がらないけどとられる税金が増えて所得が下がった(三枝)。
・お金持ちだけ株価が上がってウハウハしている(波頭)。

・水戸藩は昔すごい医学校を持っていたけど、財政難で明治の始めにやめた。現在の茨城県北部ではお医者さん不足。茨城大学に医学部を作ればいいのにそういう議論になっていない。税金はとられるのに頭がいい人が日本を成長させていない一つの姿だと思う(磯田)。
・水戸城の三階櫓も何十年と言っていても3年で建てられるものが建ちません。水戸ではやってこなかったのですごく反省して、ぼくは市長に直接会いに行くようにし始めた。そうでないと変わらないと思ったから。そういう市民が現れなきゃいけませんよね。茨城大学医学部創立同盟だとか(磯田)。
・明治のころなら「なければ俺たちが作る」という熱が茨城にはあった。これがちゃんと暮らしていける人たちの集団で、ぼくらはどこかでそれを失った。とられるほうが悪いとか言ってても、動かなきゃだめだと思っている(磯田)。

まとめ

・怖くないから踏み出して欲しい。茨城の人たちは真面目で実直で一本気。思い込んだ一本気も突き抜けないとうまくいかないよ、って言いたい(波頭)。
・経営コンサルタントとして相談を受けるが、こんなに小さな街に15も商店街があって、みんな仲が悪い。自分たちの思い通りに我を通せないんだったらうまく行かなくていいよ、っていう思いが茨城全体にある。統合することによってでないと大きいことができない(波頭)。
・過去の常識だとかやり方に身を委ねて生きていたらコモディティになってしまう、と言ってきたが、一方で茨城や水戸の方に伝えたかったのは、あまりにも自分の一本気に縛られすぎ。三枝さんや磯田さんは好奇心があるが、たくさんの本や資料などいろんなことを取り込みながら、自分の道を進んでいる(波頭)。
・水戸人は水戸っぽである事自体を誇りにしている。しかし変えないこと自体を目的化している面もある。世の中の環境は変化しているのに、「俺たちのやり方が通らないんだったら、折り合ってうまく行っても仕方ない」という考えがビジネスにも行政にも出ている(波頭)。
・常識も突き抜けて欲しいし、思い込みも突き抜けて欲しい(波頭)。

・日本人は保守的。明治維新も戦後も大化の改新も外国の刺激がないと大変化が来ない。水田をやっていることに理由があるんじゃないかと思う。1000年たっても水田は水田のままできる。西洋ですと他の作物は工夫しないと病気になってしまう。水田に工夫がいらない点が保守性に繋がっているんじゃないか。同じことを好む国民性(三枝)。
・隣の国が怪しいことになってきたので、日本にも100万の難民がやってくる可能性がある。難民を受け入れる体制づくりがこの3年の課題だ。否応なく改革せざるをえない。まだ誰も考えていないけど。こういう提案をしたい。外国がくればこの国は変わる(三枝)。

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他人から見て全く理解されないような、ただただ好奇心を突き詰めていった先の世界に生きる人ばかりでも、社会は成り立たないと思っていますが、そういう人がいることの理解やその人がやりたいことをやらせるだけの許容が今の社会には少ないように思います。
若者が生きづらさを感じるって言いますが、彼らの好奇心や生き方を認めない、余裕のない社会になってしまったんだろうと思っています。今回のセッションを聴いて、改めてそう感じました。


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